コーポラティブハウス こころをかたちに Vol.07 - archinet コーポラティブハウス

こころをかたちに Vol.07

  • 01 居場所がたくさんある暮らし

  • 02 風の抜けるヨガスタジオ

  • 03 コアのある家

  • 04 区切らずに寛ろぐ

  • 05 シンプルな生活

  • 06 明るく風通しよく

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住戸01 居場所がたくさんある暮らし

 最初は半信半疑

ずっと髪の毛を切ってもらっていたヘアデザイナーさんが独立され、その方のご自宅でカットしてもらいました。敷地に入った瞬間、門のつくり、玄関からすべてに驚き、感動したのを覚えています。その建物がアーキネットのもので、コーポラティブハウスという方法論との最初の出会いでした。
元々、家を持とうとは思っていませんでした。引越しをたくさんしていろいろな部屋に住んできました。10回ほど。その中で、いいなと思った部屋は2 戸ぐらい、満足できる物件は少なかったです。いいなと思った一つは、コンクリート打ち放しに床はフローリングという部屋でした。まだデザイナーズマンションという言葉もない頃でしたが、飾りっ気がなくて構造の力強さがそのまま表現されたような空間に、実用性とはまた別の強い満足感を覚えました。もう一つは、おそらく個人オーナーが自分で住むために、建築家とつくった一軒家。木造でシンプルで、細かい工夫がなされていました。
一方、悪さの見本のような、ミニ開発の建売住宅も体験しました。ドアノブなど、ひとつひとつのパーツが見た目の高級感を演出しながらチープな素材で、日々それに触れるたびに気持ちが沈みました。
経済合理性と万人受けを優先するとどうなるのかを実感しました。いま思えば、引っ越しを繰り返したことも無駄ではなかったと思います。
アーキネットの門を叩いたのは、しばらく郊外で暮らしたあと、久しぶりに都心に戻りたいと引越しの虫が騒ぎ出した時のこと。賃貸ではなかなか思うような物件がなく、前述のヘアデザイナーさんの部屋の印象が強かったことと、同じ職場にアーキネットの他のプロジェクトに参加した人がいたことが後押ししました。最初は半信半疑でした。自由に設計して普通の分譲マンションより安くなるはずがないと思っていました。当時、目黒アパートメントと五反田、いくつかプロジェクトが立ち上がっていて担当者にもお会いして話を伺いました。与太話みたいですが、最終的に参加するプロジェクトを絞る段階で、最寄駅からの徒歩ルートを確認しようと妻に歩かせたところ、余程の方向音痴だったらしく、JR目黒駅から目黒アパートメントの予定地に向かったはずが、なぜか五反田の予定地に着いていました。それも何かの縁だと感じました。実際にプロジェクトに参加して、設計を進める中で、コスト云々よりも、ほぼすべての物事の決定プロセスに関与するという仕組みそのものの価値に気づきました。

床から天井までの窓は要望通り。 桜の花が屏風 のように美しい。

床から天井までの窓は要望通り。 桜の花が屏風 のように美しい。

キッチンにも横長のスリット窓。壁の仕上げは要望通りのモルタル仕上げ。

キッチンにも横長のスリット窓。壁の仕上げは要望通りのモルタル仕上げ。

 決め手

駅からの近さと、目の前の桜並木、背景の池田山の街並みです。なかなかこういうところはないなと感じました。不動産関係の知人にも聞きました。自分たちは転売するわけではありませんが、できるだけ資産価値の目減りが少ない物件を選ぶのがポイントで、それには都内の駅近がいい、という意見でした。参加を決めた時は上から二番目の住戸とこの住戸の二つが参加募集中でした。やっぱり目の前に緑があるのがいい、というのが決め手です。ルイス・バラガン邸(※メキシコの巨匠建築家、ルイス・バラガンの自邸。メキシコ特有の深い自然の中にピンクや黄色を配色したデザインが有名。)の写真で、窓の外の緑がみえる感じがとても好きでした。プランも、窓のつくりまで建築家と自由に設計できると聞いていました。

 三つの要望

最初に建築家には、

  1. 例えばコンクリート打ち放しの壁のように構造とデザインが一体化した質実剛健なスタイルにしたいという大まかな方向性と、鉄やガラス、木といった伝統的な素材を使うことで質感を統一したい。
  2. 床フローリングは張り方や材質までこだわりたい。
  3. 窓は床から天井までとにかく大きくするか、もしくはスリット状にするなどプロポーションが変わった開口の開け方にするか、場所によって使い分けたい。

と要望しました。建築家の西田さんは「外に向かって開いた部分と内側に閉じた部分のコントラストをはっきりつけましょう」と、我々の曖昧な思いを受け止め言語化してくれました。壁は内断熱が採用されたためコンクリート打ち放しは断念。モルタル仕上げにしましたが、それはそれでモルタルならではの雰囲気があり悪くありませんでした。住みはじめてみて、収納はちょっと足りなかったかと思ったりはします。ちょっと尖ったものにしたいなと思っていて、最初に「機能性は考えなくてもいい」などと話していたので、ある意味その通りになりました。

 居場所がたくさんあるプランに

工夫というと全てですが…。南側の部屋の使い方は西田さんに提案してもらいました。最初の案では南側は全てベッドルームでした。でも完全にプライベートの場所にするのはもったいないなと思いました。そうすると、低いクローゼットでベッドルームとリビングスペースとを分ける提案をいただきました。当時サクラテラスの担当者から「居場所がたくさんあるプランになりましたね」と言われて、そのとおりだと感じました。南側に複数の場所、東側のテーブル、テラス、そして階下の桜並木に面した出窓といった感じで。

 どの場所も心地よい

どの場所もいいです。南側リビングからの桜の眺望はやはり抜群でした。東側のテーブル周りは、直射日光はほとんど射さず、代わりに外の緑が日の光を受ける様子を眺めたり、桜並木を通る人の気配を感じたり、ちょっと奥まったところに居ながら外部環境とのつながりを感じることができるレイアウトが気に入っています。テラスは引っ越した頃が夏で気持ち良かった。バスルームに大きな窓をつけたのも正解で、長い時間お風呂に浸かりながら本を読んでいます。一時間ぐらいずっと入っています。また、コンクリートのキッチン天板に、食器を置いたときの『コツ』という堅く確かな手応えが好きです。犬は普段はエアコンの前を独占しています。ちょうどガラス張りで外の様子が見えるので、サクラテラスのエントランスを監視できる位置になっています。おかげさまで、プロジェクトの期間中、とても楽しめました。ありがとうございました。

階段のつくりも工夫し、上下階のつながりを生み出している。

階段のつくりも工夫し、上下階のつながりを生み出している。

テラスを桜並木側に配置。東側のリビングと桜並木の緩衝帯となり、東側リビングと南側スペースをつなぐ役割も。

テラスを桜並木側に配置。東側のリビングと桜並木の緩衝帯となり、東側リビングと南側スペースをつなぐ役割も。

横に細長い窓と、桜並木側は大開口の窓ガラス、構造の梁を強調したデザインは一番のこだわり。

横に細長い窓と、桜並木側は大開口の窓ガラス、構造の梁を強調したデザインは一番のこだわり。

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住戸02 風の抜けるヨガスタジオ

 ご主人を説得して参加

以前住んでいた目黒のマンションもとても気に入っていました。徒歩17 分、2 階でしたが1 階の屋根の上が庭になっていて、鳥の声がよく聞こえました。
子どもができることを想定して買いました。マンションの周りの住戸は子どもが増えてファミリーが多くなっていきました。通勤はバスで不便なこともあるし、仕事を続ける上で自分たちの生活に合わなくなってきたと思っていました。ヨガの仕事を続けているうちに、自分でスタジオをつくって自分でやりたくなりました。マンションでやろうとすると、玄関から廊下を通って、とそれっぽくない。スタジオ兼住居にしたかった。
主人はハードワークで、職場の事務所に遅くまでいて車で帰ってきます。
コーポラティブは前から知っていました。サクラテラスの担当者とは別の案件で知り合いになって五反田の話を聞いてちょっと気になっていました。駅から近い、他のプロジェクトにはない1 戸1 フロアのかたちに興味を持ちましたが、最後の1 戸で、予算的にどうかとも考えました。だけど、こっそり見に来たら気に入ってしまいました。公園の中にある感じで、坂を上り詰めたところにあり、桜や緑がとても豊かでした。土地を見てから、主人を説得しました。プレゼンテーションも用意しました。未来を見据えて考えました。今回で家を所有するのは3 軒目。最初に購入した1LDK は人に貸しています。そのときの状況に合わせて住まいを選ぶのがハッピー。自分たちは、賃貸で遠慮しながら暮らすのはいいとは思いませんでした。

ヨガスタジオ。四角いハコにして仕切りは設けず。

ヨガスタジオ。四角いハコにして仕切りは設けず。

玄関前のテラス。 ヨガスタジオの玄関と住居の玄関を 兼ねる。

玄関前のテラス。 ヨガスタジオの玄関と住居の玄関を 兼ねる。

 ヨガスタジオと住まいを使い分け

桜が目の前にありテラスも大きく、というのがいいと思いましたが、仕事を半分持ち込むからそれは我慢しました。ヨガは下が見えると気が散ります。静かなのも大事です。きれいな四角のプランはこの住戸だけでした。スタジオとして考えたときにすごくいい図面でした。エレベーターも8 階と9 階の両方に降りることができます。ヨガの生徒さんが来たときに使い分けできるのもよかったです。メゾネットなので、プランでも完全に上の階と下の階をわけられます。風通し、見晴らしもとてもよかったです。予算面から途中で無理かとも思いましたが、何とかなりました。私たちにとって、それだけの価値がありました。

 一日中光が入る

夏。夏に引越ししました。窓を全開にすると風が通って、ほぼエアコンは必要ありません。下の階も北側なので涼しい。高窓にネコが横になって寝ています。あとは朝。朝の目覚めがとてもいいです。勉強の試験中は上の階でそのまま寝ちゃうけれど、朝になると気持ちよく目が覚める。初日の出もこの場所で見ました。日の出から日の入りまで全方向が見られます。月も東から西までずっと見ることができます。夜も好きです。デザインセンターの夜景が美しい。大崎のビル群、六本木ヒルズなどが遠くに見えて都会って感じです。車の音もしないのでいい感じです。テラスに出ても気持ちがいいです。

抜けのある開放的な浴室

抜けのある開放的な浴室

キッチン横のスペースは勉強に料理に洗濯に、「生活をコントロールする」場所。

キッチン横のスペースは勉強に料理に洗濯に、「生活をコントロールする」場所。

 風通しが大事

ヨガでも生活でも風通しが大事です。だから全方向に開口があります。南から北に風が抜けるように、キッチンの吊戸棚もなしにしました。南の暖かさが北にも伝わります。下の階はベッドルーム。あとPC が置いてあります。子どもはいないので全部で一個のハコにして、ドアはバスルームとトイレだけにしました。開放感を大事にして区切りませんでした。
キッチンとキッチン寄りの南側のスペースは落ち着きます。主婦の友達からはよく「いーなぁ」と言われます。キッチン横のスペースで勉強、料理、洗濯、食事などすべて出来ます。生活をコントロールできる感じ。部屋が足りないかなと思っていましたがそうではありませんでした。玄関のあるスタジオ側にはテーブルを置かないことにしました。いつも広々としています。床に座ったり、窓際に腰かけたりしてパーティもできます。
キッチンはスタジオと続いていて、食とか健康に関するワークショップも可能です。ヨガの後に、グリーンスムージーでデトックス、といったように。これからは、ヨガと食を絡めた健康を提案していきたいです。キッチンの南側は、4~5人でハーブティーを飲むときも気持ちがいいです。台所というよりカフェという雰囲気で、と建築家にはお願いしました。
南側は暖かいので南洋植物を、と思っていますが今は勉強が忙しいので後回しにしています。勉強は、家が仕事場だから出来ます。外にヨガを教えに行くと移動の時間もあるし、気分の切り換えにも時間がかかります。家だとすぐ勉強にとりかかれて、そのまま床で仮眠したりします。今後は書棚もミニライブラリーにして、生徒さんに貸出できるようにと思っています。壁の緑は自分で塗りました。(椅子、プロジェクター、スピーカーなど)何でも移動可能にしています。テレビ台はつくらなくて正解でした。

ネコちゃんは日当たりが良くて気持ちがよさそう

ネコちゃんは日当たりが良くて気持ちがよさそう

手前がヨガスタジオ。キッチンの奥と下階が居住スペース

手前がヨガスタジオ。キッチンの奥と下階が居住スペース

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住戸03 コアのある家

 参加のきっかけ

十数年前に地方から東京に出てきたときからアーキネットに会員登録していました。独身のときに一度事務所を訪ねたこともありました。その前に応募があったプロジェクトでは、タッチの差で申し込みできませんでした。その後、高輪台のそばで中古の戸建てを買いました。建て替えを検討し、大手住宅メーカーで建築プランを出してもらい、どうしようか迷っているときにこのプロジェクトの募集が始まりました。場所は、まさかの子供を通わせていた保育園の真ん前。あのおんぼろアパートの敷地だとは、と思いました。募集されていたのは桜の季節で、上の子と桜を観に来ながら計画地を見学に来たのを覚えています。元々のプランもいいなと思いましたが、少し狭いかな、と担当プロデューサーに悩みを伝えると、1 層を1.5 層に広げて面積を大きくする計画を考えてくれました。戸建ての建替え判断も迫り、年度末の特別優待でハンコをつく寸前でした。建築家の西田さんは、いいプランじゃないかと面白がっていろいろな間取りを考えてくれました。1.5 層のアイディアをここで見送ったら、保育園の送り迎えのたびに毎日見て後悔すると思いました。前の家と比べると駅から近くなりました。前面道路の車の交通量も少なかったです。
前の家は目の前まで車が通っていましたし、共働きというのに、建物の維持やお手入れが大変でした。庭の草はすぐ生えるし、なにより寒かった。小学校の学区は変えたくありませんでした。 京都で挙げた結婚式は満開の桜の下だったということもあり、桜には思い入れがありました。そして保育園、病院、スーパー、空港、とどれも近くて良かったです。

 住まいづくりの中心は「コア」

まず大事にしたのがコアでした。部屋の真ん中に箱状のボリュームを配置して、その四面にテレビや下駄箱、洗濯機、エアコン、クローゼット、鏡を入れ込みました。箱状のボリュームの上は座ってパソコンを使えるロフトを設けました。(建築家の)西田さんに要望を形にしてもらいました。天井からフックを引き出すと洗濯物も干せます。コアを中心に、洗濯機の前に浴室、など他の場所も順番に決まりました。ところがコアの見積もりを取ると金額のボリュームも大きくて、いい車が買えるぐらいでしたが、そこは何とかしようと心に決めました。何かの雑誌をめくっていた時に、コアのイメージを得ました。トラフ建築設計事務所の作で、西田さんに聞くと大学の後輩だったそうです。西田さんとのイメージのやりとりは、evernote を使ってクリッピングをどんどん共有して行いました。西田さんとは同い年なので通じるものがありました。

テラスの目の前は桜並木。お子様の遊ぶ公園はすぐ近く。

テラスの目の前は桜並木。お子様の遊ぶ公園はすぐ近く。

子供部屋。お子様が並んでテレビを見て寛ぐ。

子供部屋。お子様が並んでテレビを見て寛ぐ。

 テラスは家の延長

子供部屋もドアで隔てないようにしました。プロジェクトの間に子供も増えました。子供は、二段ベッドが入って嬉しそうです。勉強机で好きな塗り絵を集中してやっている時に、ちょっと人のモノが置いてあったりすると怒ります。子供がとてものびのびできるようです。公園が近いので、遊びたいときにすぐに行けるし、家の窓から公園で遊ぶ様子が見えます。母親が忙しくて少し帰りが遅くなると、子供が家の鍵を開けずに玄関前のテラスで母親の帰りを待っています。このテラスは、家の延長です。サクラテラスの人たちも何となく見守ってくれます。サクラテラスにお住まいの方々は職業も家族構成も様々でお話ししていても本当に楽しい。子供は、上にお住まいの方の犬の散歩に一緒に行くのが大好き。「七階に行きたい」ってよく言います。下にお住まいのお子さんとも仲良しで、一緒に小学校にも通っています。保育園も目の前。上の子は卒園生なので先生もよく知っているし、ご近所さん全体に見守ってもらえている感じがします。児童センターも目の前なので、雨の日で退屈したときでもすぐに遊びに行けます。

 落ち着く時

夏は桜の葉が茂って、緑を感じます。実家の母も、この家に来て手伝うのが楽しいと話しています。お風呂に入るときは、子供三人で入って大騒ぎをします。浴槽は170 ㎝あるので足を伸ばせるのがいいです。浴室のガラスブロックが交互に組み合わさっていて、きらきら美しいのを眺めながら湯船につかります。休日の朝ご飯が楽しいです。もっぱら夫がつくります。ポテトチップ、ホットケーキなど平日はつくらないものが中心です。窓を開けて食べるのが気持ちいいです。二段ベッドの下で子どもを寝かしつけるときは至福です。寝かしつけながら、玄関前テラスの緑を眺めると落ち着きます。忙しくて時間がなさすぎですが、こんな安らげるひとときがあります。建物が完成したあとは、アーキネットのホームページを見なくなったのが惜しいかもしれません。

奥様が「家の延長」と表現するテラス。雨は降りこまず、専用性が高い外部空間。

奥様が「家の延長」と表現するテラス。雨は降りこまず、専用性が高い外部空間。

寝かしつけながら眺める玄関前テラスの緑。

寝かしつけながら眺める玄関前テラスの緑。

メインのリビング。桜越しに、通っていた保育園やお子様が遊ぶ公園が見える。

メインのリビング。桜越しに、通っていた保育園やお子様が遊ぶ公園が見える。

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住戸04 区切らずに寛ろぐ

 きっかけは大震災

東日本大震災のとき、二人でそれぞれ別に暮らしていました。しばらく安否確認もできませんでした。そこで一緒に暮らそうと思いました。平日は忙しいので、通勤時間が短いこと、景色がいいこと、地盤が固くて由緒あること、が家を探す基準でした。友人にコーポラティブハウスで住まいをつくった人がいて、そこで初めてコーポラティブハウスを検索してアーキネットにたどり着きました。

 緑が印象的な敷地

募集当初は、この住戸の面積は45 ㎡くらいしかなくて、場所はすごくいいけれどもう少し広い方がいいと思いました。ひとまず現地を見に行きました。周辺の緑が非常に印象的でした。サクラテラスは面積の調整が可能なルールで、専有面積が60㎡になったので思い通りになりました。

 いかに寛げるか

狭くしない。空間を細かく区切りたくありませんでした。東と南に開口部をなるべく大きく設けて、西の壁はL 字に全部、壁面収納にしていただきました。収納は天井まで高さがあると圧迫感があるので、上の方に少しゆとりをとってあります。暮らし方としては、アクティブに外出して、色々おいしいものを食べて、家にすぐに帰ってゆっくりする。東京を満喫する感じです。そして自然に囲まれる。品川、高輪、白金、渋谷、新宿とアクセスはすごくいいです。歩いてどこでも行けます。住んでみると、家の中に開放感があるので、外に出る機会が意外に少なくなりました。週末、一歩も外に出ないこともあります。窓を開けたら外に出た気持ちになります。レイアウトも、キッチン、リビングを一体にもできましたが、それぞれを分けることにしました。平日は8 時30 分から22 時前後まで働く生活ですので、いかに寛げるかという視点からレイアウトを決定しました。

桜の木よりも少し高い位置で、眺望も開けているリビング。

桜の木よりも少し高い位置で、眺望も開けているリビング。

間仕切りがないのでリビングとダイニングは緩やかにつながるを 兼ねる。

間仕切りがないのでリビングとダイニングは緩やかにつながる。

 隅々までこだわりを

白を基調に。なるべく広く、リラックスできるようにお願いしました。ダイニングについては、最初は建築家から梁の高さに天井を合わせようという提案がありましたが、少しでも空間を広く感じたいので、天井は構造の形状そのままにしました。クローゼットも天井までの高さにせずに、ちょっとだけ空間を空けました。照明は壁付けにして、ペンダントライト以外天井には極力何もないようにしました。火災報知器もできればなくしたかったです。フローリングは幅広で、ホワイトオイルのふき取りタイプです。洗濯機はダイニングから洗面所への通路の脇に収納しています。食事の時間はとても大事。二人だけどテーブルは大き目、透明なガラスで昔から知っているテーブルを置きました。リビングは家具の高さをとにかく低くしたかった。床にモノを置くと掃除しにくいので、壁面に棚をつくってテレビを置きました。
浴室は、ドイツのカルデバイ(※KALDEWEI / ドイツにあるホーロー浴槽の専門メーカー。高いデザイン性が人気で、世界中の高級ホテルなどで使用されている)のバスタブで最初から決めていました。浅くて広いです。

 週末は家でのんびり

時間帯や季節によって違います。朝や夏の時期はキッチンが気持ちいい。料理をしながら外の景色を見ているとボーっとできます。ブラインドを下ろして桜並木からの視線と合わない角度に調整しています。昼や冬の時期は光が沢山差し込むリビングでごろごろするのが心地よい。テレビやDVDを観て、漫画を読んで、音楽を聴いてという感じです。あとはもう少し植栽が欲しいです。コーポラティブハウスは、住まいを長く大事にする人達に合っていると思います。

浴室は白を基調に。設計当初から心に決めていたカルデバイの浴槽。

浴室は白を基調に。設計当初から心に決めていたカルデバイの浴槽。

キッチンにはサブウェイタイル。このタイルも最初から決めていたそう。

キッチンにはサブウェイタイル。このタイルも最初から決めていたそう。

朝が特に気持ちいいキッチンとダイニング

朝が特に気持ちいいキッチンとダイニング

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住戸05 シンプルな生活

 参加のきっかけ

元々コーポラティブハウスにこだわりはありませんでした。エリアとしては、山手線に近い城南エリアで探していました。たまたま他のコーポラティブハウスの会社のプロジェクトで仕組みを知って、調べ始めたらアーキネットに行き着きました。(サクラテラスの)説明会前日にアーキネットのホームページを見て、「まだ間に合うかな?」と思いながらメールで相談会に申し込みました。そしたらすぐに返事が来て、相談会に参加できました。広い家というより、場所や仕事のしやすさを重視してこのプロジェクトに関心を寄せた記憶があります。実家が埼玉なので実家に戻るのも近いし、母も近くにいるので行き来もしやすい。初めて訪れた時、ちょうど桜が散り始めでとても綺麗でした。駅からすごく近くて利便性がとても高く、桜がきれいな場所だったので気に入りました。

 プラスアルファの面白み

相談会に参加したのはちょうど募集が始まったばかりの頃で、一階だけ参加者が決まっていました。3 ~ 5 階だと、桜が一番よく見えてとてもいいのですがその分予算は高くなります。結局参加したこの住戸は間取りが募集プランそのままでも面白く、とても気に入りました。庭があって、ドッグランのように横に長い。プラスアルファがあって面白かったです。コーポラティブハウスの中でも、動かせない柱が四本だけで中が自由にできるという条件は間取りの自由度も高く、すぐに申込を決めました。

 シンプルな生活

基本的には、「シンプルな生活」が憧れとしてありました。モノはなるべく持たないように。(建築家の)西田さんと話をしながら、漠然とした思いを伝えることに集中しました。できるだけ自分からは細かいことは言わないように心がけました。フローリングについては、シンプルで落ち着いたトーンということでウォールナットのイメージがありました。そのイメージを中心に設計は進めていきました。家の中でのこだわりは、(天井直付けの)プロジェクターで時間があるときに映画を観ること。パソコンを使うことが多いので、その時の気分で場所を変えながらテーブルを出して使う。生活パターンが決まっているというより、その時その時で場所を変えて生活する感じです。ベッドルームは南側でとても明るく、晴れていると冬でも暖房は必要ありません。視界がとても広がるので明るい気分のときによくいます。廊下に設置した可動式のテーブルは、ふと飽きたときに利用しています。リビングでの作業は、「ながら」でやるときです。テレビを見ながら、家族で会話しながら。

玄関前からリビング脇まで、テラスは横長に広々としている。

玄関前からリビング脇まで、テラスは横長に広々としている。

パブリックスペースに配置した、テラスとリビングのつながり。

パブリックスペースに配置した、テラスとリビングのつながり。

 パズルのような設計のやり取り

プライベートスペースとパブリックスペースを分けました。玄関側がパブリックなのですが、キッチンはパブリックスペースに配置しました。電子レンジを置く場所が限られていたので、場所優先でキッチンにコンベックオーブン(※電子レンジとガスオーブンの機能を兼ね揃えた機器。キッチンにビルトインで組み込み、余分な機器を外に出さない設計が可能。電子コンベックやガスコンベック等、メーカーにより名称は様々。)を要望しました。庭は見た目の空間が広くなるので、パブリックスペースに配置しました。南側のスペースは天空率の関係で斜めに切られるので、全体的にオフセットして横長にしました。その代りバスルームの天井は一部斜めになりましたが、それはそれで良かったです。プランを決めるまでの設計のやり取りは、空間の制約があってパズルのようでした。結構細かい作業でしたが、うまくいったときはすごく楽しかった。建築家の西田さんには色々意見して、色々な案を考えていただきました。

 居心地のよい瞬間

南側のベッドルームは日差しが入って、ものすごく気持ちがいいです。光が入って暖かい。作業をしながら、ふと顔を上げたときに視界が広がります。居心地が良いと思う瞬間は、そういう時です。

 人間関係が一番の魅力

(プロジェクトの)期間が結構あったので、つくっている時から濃密な関係になりました。(五反田という)場所で人のカラーが決まるのかもしれませんが、大人で紳士な人たちばかりでとても良かったです。前向きに話し合いが出来ます。皆様には気を遣っていただいて、気持ちよくプロジェクトが進行しました。適度な距離感がいいですよね。管理組合の総会は月に1 回開催しています。他の住戸の方々とは、常につながっている感じ。普段の連絡はサイボウズやグループウェアといった媒体で建設中使っていたのを、そのまま管理組合に移しました。毎日のように書き込みがあります。「桜が咲きましたね!」といった感じで楽しくやり取りをしている。駅の周辺や、朝夜の建物の入り口付近で、コーポラティブハウスのメンバーとはよく会います。掃除は当番制にしています。一週間ごとの当番制です。月に1~2 回でエントランス周りとエレベーターをお掃除しています。管理組合のやり取りはみんなで楽しんでやっています。コーポラティブハウスは、間取りを含めた自由度ももちろんありますが、やっぱり人間関係が一番の魅力だと思います。

廊下に設置した可動式のテーブル

廊下に設置した可動式のテーブル

ベッドルーム。晴れていると冬でも暖房は必要ないそう。

ベッドルーム。晴れていると冬でも暖房は必要ないそう。

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住戸06 明るく風通しよく

 ビビッときて、即申込

以前は等々力渓谷のそばに住んでいました。周辺にはマンションが少なく、一軒家ばかりが立ち並んでいたのですが、家の近くに一棟だけコーポラティブハウスがあって、この仕組みを知りました。(サクラテラスの募集開始の案内を受けて)昨日の今日で説明会に参加し、説明会の翌日には参加を決めました。ビビッと来るものがありました。決め手は周辺の環境・風景。敷地の周りに緑があり、窓から見える風景がとても開けていると思いました。便利さだけでも緑だけでもだめ。犬が二頭いることもあり、犬も含めて過ごしやすい住宅をずっと探していました。この企画は犬もOK で、外部のテラスが三つもあり、(メゾネットの)下の階ということもストレスはありませんでした。うちの犬は部屋の中から外を見るのがとても好きなので、家の中でお留守番させる時でも過ごしやすい家にしたいと思っていました。

 明るく風通しよく

明るく風通しよくしたかったです。虫は嫌いですが、このフロアくらいの高さがあれば外のテラスでも大丈夫だろうと思いました。当時建っていた既存家屋は築40 年の一軒家でじめじめ暗かったです。今ではとても明るく風通しも良くて、ドンピシャです。コンセプトは、とにかく「明るく風通しよく」。犬も過ごしやすいように。夫婦二人と犬二頭がいつも一緒にいられるように。自分たちには子どもがいないので、部屋数は少なくても大丈夫でした。犬は室内に荷物を置いていると悪さをするので、モノは収納の中に押し込めるように要望しました。

 階段を一番光が入る場所に

床は(犬が)すべらないようにお願いしました。粗相をして濡れたりしても、しみこまないような素材を選びました。フローリングではなく、タイルにしたのですぐ拭けます。犬は陽当りのいいソファがお気に入りです。陽が傾くと暖かい場所に移動します。夏になり暑くなると冷たい床で伏せるようにして寝ています。外部に窓が大きく開いた浴室にしました。浴室は、最初のプランでは西北側でしたが、東側に配置変更しました。テラス越しに桜の木も見られて、一年中バスタイムが楽しみです。南側は二層分の明るい吹き抜けです。階段の位置を一番光の入る南側にするのは、(建築家の)西田さんの提案で大正解でした。吹抜け階段の電気をつけると、外から見てもとてもいい感じに見えます。弟くん(犬)は階段を上ってベッドで横になるのが好きです。小さいテラスはリビングの延長です。休日に軽くご飯を食べたりしています。妻は、下の階のテラスにある赤い椅子にしょっちゅう座って外をぼーっと眺めています。上の階のテラスはハンモックがあって、夏は風通しがよくすごく気持ちがいい。気持ちが豊かになります。冬は下の階のテラスがお気に入りです。上の階はふとんも干せます。風通しがいいのでカラッとします。

南側に配置した階段。ソファで横になると、5分もすれば眠りに誘われる。

南側に配置した階段。ソファで横になると、5分もすれば眠りに誘われる。

ガラス張りの浴室。テラスでくつろぐ奥様と窓越しに会話することも。

ガラス張りの浴室。テラスでくつろぐ奥様と窓越しに会話することも。

 キッチン

キッチンの天板の高さは犬が届かない高さにしました。盗み食いしないように。妻は背が低いのでキッチンメーカーの担当の方からは「ちょっと高いと思う。フライパンをあおれませんよ。」と言われました。でも結果的にはちょうど良かったです。高い天板は料理しながらお客さんと一緒に食べられる。桜が咲く時期はお客さんがたくさんいらっしゃいます。台所に立っていても外が見えるのはとてもいいです。古くから建つ周辺の建物の高さが低く、景色が開けているので心地よいです。西側はマンションがあるので壁で塞ぎました。西側以外には壁がなくガラスで開放的な設計にしました。光熱費は尋常でないくらい安くなりました。夏でも風が通るので、冷房をつけなくても十分。風が通る心地よさは実際に暮らしてみて衝撃的でした。暑さはブラインドで防げます。逆に冬は日差しが入って暖かい。前の家では夜中エアコンをかけたりして、翌日体がダルくなったりしていました。今の暮らしはエコ。植栽も好きで、上下階のテラスに鉢植えがあり、日々配置を変えています。枝垂桜が咲くのが嬉しい。10 年目のハイビスカス、ルリマツリなどいろいろ。玄関前のテラスにも植物を植えたりしています。

 お昼寝する時間が至福

建物が完成して両親がはじめて来たときは、いわゆる分譲マンションのイメージからかけ離れすぎていて「言葉がない…」という感じでした。ところが小一時間経つと「居心地がいい」と言ってそれから4~5 日連泊したほどでした。なんとなく落ち着きます。ソファで寝たり、階段の途中でずっと外を眺めたりする犬の様子を見ると、ほっこりします。平日の午後から夕方にかけて、ソファでお昼寝する時間が最高です。5 分としないうちに寝てしまいます。真冬の寒いころでも、日が照っていると一枚羽織れば本を読んで過ごせます。お風呂にポータブルテレビを持ち込んで浴槽で足を伸ばし、外のテラスで寛いでいる妻と窓越しに会話したりします。必要だからお風呂に入るのではなくて、寛ぎたいからお風呂に入るようになりました。結果的に、お風呂が東側のいい位置になりましたが、洗濯や掃除など、過ごすことが多い場所です。過ごすことが多い場所が気持ちいいのはとてもいいと思います。

ソファでくつろぐワンちゃんを眺めるとほっこりするそう。

ソファでくつろぐワンちゃんを眺めるとほっこりするそう。

上下階でテラスとテラスがつながる。ご主人がハンモックでくつろぎながら、下を見渡すと奥様もボーっとしていることも。

上下階でテラスとテラスがつながる。ご主人がハンモックでくつろぎながら、下を見渡すと奥様もボーっとしていることも。

階段の吹き抜けを下から眺める。照明は、夜に外から見るといい感じ。

階段の吹き抜けを下から眺める。照明は、夜に外から見るといい感じ。

 居住者同士の団結力

下の階の小さい子供のいる家族は、犬と触れあいたいそうで、たまに一緒に散歩します。おすそ分けもよくあります。掃除当番も嬉々としてやっています。清掃業者に頼んでいると気付かないところも、自分たちで掃除するとよく分かると思います。この建物を大切に守りたいという当事者意識が高いです。建つまでの時間がある程度長かったので、その分団結力も強い。引越しの時からお互い協力し合っています。東五反田町内会にも個人会員として参加しています。それまでは会員の最年少が80 歳だったそうです。若い人間が入ったということでとてもよくしてくれます。神社の豆まきにも声をかけていただけるし、ちびっこたちも良くしてもらえる。

 最後に

「出会いは大事だ」と思います。同業他社に問い合わせた際は、応対もビジネスライクでがっかりしたのを記憶しています。アーキネットの担当者さんと出会う事が出来たからこその、即断即決だったと思います。また、建築家と打ち合わせを始めると、自分たちが漠然と考えていたことがどんどんかたちになる。その過程はとても楽しかったです。

奥様が寛ぐことの多いテラス。洗濯ものも干せて、浴室ともつながる家の中心。

奥様が寛ぐことの多いテラス。洗濯ものも干せて、浴室ともつながる家の中心。

  • 01 居場所がたくさんある暮らし

  • 02 風の抜けるヨガスタジオ

  • 03 コアのある家

  • 04 区切らずに寛ろぐ

  • 05 シンプルな生活

  • 06 明るく風通しよく