目指したのは、ナチュラルで心地の良い空間
住戸01 「用の美」が息づく、自然とともにある住まい
参加のきっかけ
住まい探しを始めてから、実はかなりの時間が経っていました。もともとこの周辺に住んでいて、当時は賃貸。子どもが二人になったことで手狭になり、「そろそろ購入を」と考えはじめたのがきっかけでした。
場所はこのエリアに絞り、予算を見ながらいくつかのマンションを検討しました。ちょうどコロナ前で、住宅ローンの金利も低く、「今がタイミングかもしれない」と思っていたのですが、どの物件もいまひとつ心が動かない。
特にファミリー向けマンションは、どうしても間取りや仕様がフォーマット化されていて、「こういう家に住みたい」と思えるものがなかなかありませんでした。自分たちの価値観や生き方が反映できる住まいを求めていたんです。
最初は中古のヴィンテージマンションを買ってリノベーション、という案も検討しました。でもその時期は価格が高騰していて、新築と変わらない価格帯。しかも、すでに業者が改修を済ませた状態で、スケルトンから手を入れられるような物件も少なかった。
そんなときに出会ったのが、アーキネットの「等々力みはらしテラス」でした。アーキネットのことは以前から知っていて、自分の知り合い関係にも住んでいる人がいましたし、仕事を通じて建築家と接することも多かったので、プロジェクトには親しみがありました。ただ、正直に言えば「アーキネット=高い」という印象を持っていました。
でも実際に自分で家探しを始めてみて、他の選択肢と比較してみたとき、ことさら高額ということはなく、考え方に対してのコストパフォーマンスの良さを感じました。お金の流れが見えるかたちで、納得感のある仕組み。それが決め手になり、迷うことなく参加を決めました。
私たちが選んだのはメゾネットタイプの住戸で、長方形のシンプルな形状に吹き抜けがあり、カスタマイズの自由度が高そうだと感じたのも、惹かれたポイントのひとつです。
住戸選び
(全11住戸のうち)この住戸を選んだ理由は日当たりと開放感でした。以前住んでいた社宅は築40~50年で、かつ、日当たりもイマイチでじめじめしていたんですよね。なので、そこから解き放たれたいという思いがありました。募集が始まった当初は、まだ敷地内に古屋があったので、その屋上に上がらせてもらい、眺望を確認しました。
大事にしたこと
家づくりにあたって、最初に設計担当の方と共有したキーワードは「用の美」でした。見た目ばかりにとらわれず、使いやすさや機能性から生まれる美しさを大切にしていきたいという考え方です。外とのつながりを意識しながら、開いたり閉じたりできる「余白」のある空間を目指しました。 家族は夫婦と小学生・保育園児の4人構成。個室にこだわるよりも、それぞれが「パーソナルな居場所」を持てるような空間づくりを意識しました。 プランは当初の設計案をベースに、「ここはこうしたい」「これは残したい」と少しずつ積み上げていきました。上下の空間の性格を意識し、上階は外とのつながりを感じられる空間、下階はパーソナルに籠れる空間として構成しました。 床には木材を使い、壁の高さやコンセントの位置まで細かく検討することで、自然と私たちらしい個性が表れていきました。いわゆる「北欧風」「クール系」といったスタイルを狙うのではなく、自然素材の良さを生かし、ナチュラルで心地よい空間を目指しました。 北向きという条件も、私たちにはプラスでした。落ち着きや包まれたような感覚があり、それでいて日当たりは十分にある。窓の外には国分寺崖線の緑が広がり、四季を身近に感じられます。 家づくりの主導は私が行い、妻は「予算に見合っているのか」という視点から全体をチェック。必要な説明は合理的に伝え、夫婦の合意を丁寧に重ねていきました。 インフィルでの見積もりが当初の想定からオーバーしてしまった際も、機能性に関してはきちんと投資すべきだと考えました。たとえば断熱にはこだわり、樹脂サッシ(※1)を採用して予算を上げましたが、それによって快適さと光熱費のバランスがしっかり取れています。
※1 樹脂サッシ 断熱性の高い樹脂製の窓枠
玄関脇スペース | 階段とキッチンとつながりが感じられるよう設計されている
北向きの優しい光が入るリビングダイニングキッチン
実際に暮らしてみて
実際に住んでみて、「本当に良かった」と感じる日々です。段階を踏みながら、自分たちの暮らしに馴染んでいく感覚があります。
竣工から入居の間には、ウッドショックや給湯器の納品遅れなど、社会的な転換期にあたり、少しバタバタした時期もありました。それでも住み始めてからの納得感はとても高く、時が経つほどに空間に「味」が出てきている気がします。
北向きの落ち着き、夏の緑の豊かさはとても魅力的で、旅行から戻ってきたときは、「うちの方がいいな」と思うことも。リビングから感じる緑、鳥や虫の音…東京にいながらこれだけ自然を感じられるのは、なかなかありません。
子育てにもとても良い環境です。公園がすぐ近くにあり、保育園も公園の中にあるので、日常の延長として自然の中で過ごすことができます。家族がこのエリアに根付いて、穏やかに暮らしている実感があります。
地階の魅力は、圧倒的な静けさ。崖上という立地のため風が強いこともありますが、地階にいると豪雨や強風の音が届かず、とても落ち着いて過ごせます。室内環境も安定していて、夏でも冬でもエアコン一台でほぼ過ごせています。吹き抜けを生かした間取りや、断熱性を高めたおかげだと思います。
アドバイス
家づくりで⼤切だと感じたのは、「⾃分の価値観」を知ること。世間⼀般で当たり前だと思われている暮らしのメリットデメリットは、実は住まい⼿の考え⽅や⾒⽅次第で全く違うものにもなります。たとえば、北向きや地下の住⼾に不安を持つ⽅もいるかもしれませんが、むしろ落ち着きがあり、快適で⼼地よい住まいになる可能性もある。まずはどんな暮らしがしたいのか、⾃分にとっての⼼地よさとは何かを知ることが、家づくりにおいてとても⼤切だと思いました。
コーポラティブハウスという選択肢は、もっと多くの人に知ってもらいたいと感じています。住まいの「デザイン性」というよりも、暮らし方や生き方を形にする手段として、とても価値があると思います。
また今の時代、⼈とのつながりが⽣まれる点でも素晴らしい価値があると思います。皆で住まう家づくりを通して、他の住⼈の⽅々とは⾃然と仲間のような関係を築くことができます。こうした新しい出会いにめぐり会えたことも良い経験でした。挨拶を交わし、自然な関係が築ける環境は、子どもにとっても社会性を育む良い機会になると思います。
昨年は、管理組合で世田谷区から杵と臼を借りて餅つきを行いました。コーポラティブの皆さんで集まり、季節の行事を楽しむことができる。そういう暮らしがここにはあります。
吹抜け越しに上階から下階を見下ろす
隣接環境の豊かな自然